綺麗な病院だった。医者にMRIを渡す。要望を伝えた。日程を確認して一言。 「じゃぁ切りましょうか」 これぐらいひどくて本人が希望、ベッドの空きもあるから拒否する理由もない。あっさりした先生だった。 「どこから来たの?」 「宇都宮です」 満場一致でハモる「え?」の声。じゃぁ、頻繁にこれないだろうからと、今から今日できる入院の準備始めましょうかと提案された。よい先生だと思った。次回の来院はもう手術。こんなに判断が早い医者は初めてだった。 手術まで約2週間、色々準備に追われ会社と親に連絡した。展開の速さに双方驚いていた。 手術1週間前、地域のとある企業の夏祭りに家族と出向いた。お祭りのイベントなのか、常設イベントなのか不明だが「5年後にはがきを送ろう」というコーナーがあった。5年後の自分に書いた。「今、手術前で不安なこと、ダイエットの目標達成したか?」と書いた。 ダイエットと言ってもこの時は軽い食事制限とストレッチだけだった。特に腰を念入りに伸ばした。椎間板ヘルニアの治療で足を引っ張る治療法があるそうだ。初めに行った医者にも勧められた。これを何とかセルフでできないかと考案した。 壁際に足を垂直に伸ばし寝る。お尻を持ち上げ踵を壁につける。踵で踏ん張りながらお尻を床に近づけると腰が伸びる。 これを毎日朝夕行った。功を奏したのか、見た目普通に歩けるようになった。そしてお盆休み初日、家族は実家に向けて、私は東京に向けて出発した。 病院に着き、入院手続きを行いベッドに案内された。同部屋の数人は歩行器を使って歩いていた。足2本だけで歩ける私はマシだと思った。ベッドの上で、手術後のリハビリ運動のレクチャを受ける。その後、看護婦さんに尿瓶を渡され 「手術までできるように」と言われた。 管を通さると思っていたが安心したような複雑な気持ちだった。尿瓶を置くと正確に内視鏡で切るため今の状態を確認したいと言われ、レントゲン室とMRI室に行った。撮影が終わりベッドに戻った。暇になった。これが1週間続くのかと思った。 1時間経っただろうか。医者に呼ばれた。 「今痛い?」 「ピーク時よりは痛くないですね」 「MRIの結果見てるんだけど・・・椎間板へこんでいるんだよね。」 「え?」 見せてもらうと確かにへこんでいる。ちょっと出ているだけだ。数か月前取ったMRIと比べるとあきらか。 「これじゃぁ切れないな」 声を失った・・・直すために来た、散々腰痛で振り回された。手術が終わればやせるための運動をするつもりだった。どうするんだ? 「先生切ってください」声がようやくでた。自分で(だから!)とつっこんだ。 医者は優しかった。 「良かったですね。切らずに直りました。運がよかったんですよ。なかなか自然と直る人はいないです。あなたよりひどくない人が歩行器を使っているんです。切ってしまうとリスク負う、あなたはリスクを負う必要がない人です」 「退院です」 気づいたら上野駅に居た。入院数時間。私の椎間板ヘルニアは手術せず巣に戻った。妻に電話した。事情を話した 「家で一人で掃除でもしてろ」 妻の優しさだ。気分転換でよく掃除をする妻。電話越しに私の気持ちを察したのだろう。家に帰った。 「さて、やせるか」一言つぶやいた。

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